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「……僕がこうやって気持ちを前向きに切り変えられたのは、梶矢さんのおかげです。本当になんてお礼を言ったらいいのか」
涙をこらえるような声で優羽に礼を言われたカギヤは、思わず抱き締めたくなるような愛しさを覚え、顏が熱くなるのを感じた。
「え、あ、いや、そんな僕なんて別に……」
ピーマンの呪文が効いているため無言ではあるが、あからさまにニヤニヤしながらこっちを眺めているマリネをにらみつけて、カギヤは背中を向けた。
「あ!そういえば自転車は今どうしてるの?鍵が壊れたって言ってたから気になっていたんだけど、もう直してもらった?」
カギヤは、今回電話をかけた本題をさりげなく聞いてみた。
「え、そんな小さなことを覚えていてくださったんですか?って、いけない!僕が忘れてました!駐輪場に預けっぱなしだ……料金すごいことになってるかも」
「いろいろあったから仕方ないよ。よかったら僕が駐輪場に行って直しておいてあげるよ?鍵の修理は仕事柄得意でね。そしたら明日の仕事帰りから、君は自転車を使えるし」
「本当ですか?そうしていただければ助かります!カギヤさんのご厚意に甘えてばかりで、お恥ずかしいのですが……」
優羽はカギヤが自分を気にかけてくれていることが嬉しくて仕方なかったのだが、カギヤは再び自転車が使用できることを優羽が喜んでくれているのだと思っていた。
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