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カギヤは枕代わりのクッションと毛布を数枚用意して、リビングの長ソファを簡易ベッドに仕上げるとマリネを抱えて横たえた。
小柄なマリネには丁度良いサイズらしく、気持ち良さそうに眠り続けている。
その寝顔は天使のような愛らしさなのだが、時々不気味な笑い声を発するためカギヤをそのつどビクリとさせた。
今頃モグリ先生が悪夢にうなされていなければいいけど……と、一抹の不安を覚えながら、カギヤは汗を流すべくバスルームへと向かったのだった。
翌日の昼過ぎ。自前のくすんだ緑色の作業服を着てボストンバッグを肩から下げたカギヤは、優羽が自転車を預けたままだという駅前の駐輪場へやって来た。
「こんにちは。お忙しいところすみません」
と、駐輪場の出入り口にある管理室の中で事務椅子に座ってモニターを見ていた管理人に声をかける。
「はい、こんにちは。何か用かいね」
キャップを被りジャンパーを羽織った人の良さそうな初老の男性が、椅子から立ちあがって近づいてきた。
「実は春野優羽さんという男性から、こちらに自転車を預けっ放しにしてしまっているとうかがいまして」
「おや、アンタ、優羽ちゃんの知り合いかね!あの子、突然ぱったり来なくなっちまったから心配してたんだよ!」
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