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「僕は、梶矢と申します。管理人さんが、優羽君をご存じなら話が早いですね。実は……」
優羽の自転車の鍵が壊れて歩いて帰った日に家族に不幸があり、そのまま対応に追われて引き取りに来られなかったことを、カギヤは簡潔にまとめて伝えた。
すると、管理人はぐずぐずと鼻をすすりだした。
「そういや以前、鍵の調子が悪いから今夜は置いていくって言ってたっけ!……そうだったのかい、可哀想になぁ……優羽ちゃんっていい子だろ?いつもあの明るい挨拶を聞くと、元気もらえてさ。自転車が故障したからってそのまま放置するようないい加減な子には見えなかったし、おかしいと思ってたんだよ!」
カギヤは、優羽がキーホール以外でも誰に対しても裏表なく接しているのだと知り、自分が褒められたかのような嬉しさを覚えた。
「それで今夜からまた優羽君が使用できるように、僕が自転車の鍵の修理に来たのですが」
「優羽ちゃんの自転車はウチに預けられる最大日数がすぎちまってたから、一旦コインパーキングからはずしたんだ。そんな事情だったら、香典代わりってことで延滞料金はいらねぇって言っといてよ。他の人には内緒だよ?」
「管理人さん……ありがとうございます」
カギヤは胸が温かくなった。この男性が人情に厚いというだけではなく、今までの優羽の人柄もあってのことだろう。
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