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「96」に入る前から捜査二課の刑事として、楽をして大金を得たいというだけで他人を食いものにしている悪党たちを見てきたカギヤは、こういう人たちばかりだったら犯罪なんて起こらないだろうに……と、思わずにいられなかった。
カギヤは管理人に案内されてスロープの端に沿って作られた歩道を歩き、二階へと上がっていった。
各階のフロアにはフェンスで仕切られた一角があり、預かり期限の最大日数を過ぎても引き取り手の現れない自転車が移動させられている。
管理人がフェンスの扉の鍵を開けてカギヤも続いて中へ入ると、優羽から聞いていた特徴の自転車が目に留まった。近づいて防犯登録番号を確認すると間違いなかった。
「管理人さん、優羽君の自転車はこれですよね?」
「……ん?あぁ、それそれ、その自転車だよ!いいよ、鍵を直したら持っていって」
カギヤがフェンスで仕切られたスペースから自転車を抱えて運び出すと、管理人が再びガチャリと鍵を閉めた。
「そんじゃ、俺は管理室へ戻るから後はよろしくな」
「昔ながらの味がある南京錠ですね。渋い金色と艶、施錠した時の音がすごくいい……この大きさのものは、最近ではなかなか目にする機会も……」
「ん?」
「あ、いえ、すみません!少しこの場をお借りしますが、修理が終わったら、いつも優羽君が自転車を預けていると聞いた場所にとめて帰りますので!ありがとうございました!」
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