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思わず錠前に目を奪われていたカギヤは、慌てて頭を下げて礼を言った。
壁に寄せて自転車を置くと自分はその隙間に入り、突然誰かに後ろから近づかれないように位置取ってしゃがむ。
「さてと……君の機嫌が悪くなった原因は何かな?」
と、自転車の鍵に語りかけながらボストンバッグから工具箱を取り出すと、その中に入っていた細い針金のような道具を使って早速状況を調べ始めた。
途端にカギヤの表情が険しいものとなる。
「これは故障じゃない。異物を詰め込んで壊されている!……母親が亡くなった日に限って優羽君が自転車を使用できなかった点に目を付けるなんて、さすがヒドウ君だ」
カギヤは壊された鍵を丸ごと外すと、用意してきた新しい鍵に付け替えた。
そして念のために、今まで優羽が置いていたのとは別の場所に駐輪をした。
「これでよし」
カギヤから壊された優羽の自転車の鍵を見せられて説明を受けた管理人は、ショックを受けたようだった。
「そんな……もっと俺がちゃんと見ておいてあげたら、きっとこんなことには……」
「管理人さんが他の利用者へ対応をしている時を狙ったのかも知れませんし、全部を完璧に見ているなんて誰だって無理ですよ。もしかしたら防犯カメラに犯人が映っていませんか?」
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