【12】目の前の別世界

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「死亡時に受け取ることができる金額は?」 「ゼロです。死亡保険は現在検討中だったと、担当者の女性が快く教えてくれました」  本来なら個人情報として教えてはくれないだろうが、現実離れした美貌のヒドウに迫られたら「少しだけなら」と話してくれそうだと思ったカギヤの人員配置が、当たったようである。  ヒドウが、綾子だけではなく優羽の情報も同時に伝えたのは、優羽自身が春野家の保険加入状況を聞かされていれば、母親を殺しても大金は手に入らないと知っているため、犯人ではない可能性が極めて高いとカギヤに伝えたかったからだ。 「ありがとう、ヒドウ君」 「いえ」   ヒドウが最初に参加した「新規武器輸入ルートの壊滅作戦」から、相棒(バディ)として何度も命がけの任務に当たってきた二人だからこそ、最近ではすべてを言わずとも考えが伝わってくる。 「あ、ちょうど良かった!今から僕とまた組んで欲しいんだけど、いいかな?」 「はい。もちろん」  カギヤはヒドウに指示を出すと、優羽に新しい自転車の鍵を届けるべく久々に純喫茶キーホールへと向かったのであった。   純喫茶キーホールの店内はランチタイムが過ぎて、客数もまばらで落ち着いていた。
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