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そう微笑んだ優羽ではあったが、内心、昨夜通話中にカギヤが慌てて言った言葉が頭から離れなかった。
僕、奥さんどころか恋人だっていないんだから!
だったら、どうして左手の薬指に指輪なんて……。
梶矢さんには心に決めた相手がいると思っていたから、僕は本当の気持ちを隠し通そうと決めていたんだ。
それなのに……。
僕は梶矢さんのこと何も知らない。
だからたくさん知りたいのに、今の関係を壊したくなくて何も聞けない。
「それじゃ、せめて今日のコーヒーとケーキのセットぐらい、ごちそうさせてよぉ。アタシだってお礼したいし!」
ママの明るい声に、優羽とカギヤが一瞬で現実に引き戻される。
「分かったよママ。今日はお言葉に甘えることにしようかな」
皆の厚意を、あまり頑なに断っても失礼になりそうだと思ったカギヤは、困った笑顔になりつつ申し出を受けることにした。
「あれ!もうこんな時間じゃないか。どうも、ごちそうさまでした!それじゃ僕は、これで」
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