【12】目の前の別世界

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 そう微笑んだ優羽ではあったが、内心、昨夜通話中にカギヤが慌てて言った言葉が頭から離れなかった。  僕、奥さんどころか恋人だっていないんだから!  だったら、どうして左手の薬指に指輪なんて……。  梶矢(かじや)さんには心に決めた相手がいると思っていたから、僕は本当の気持ちを隠し通そうと決めていたんだ。  それなのに……。  僕は梶矢さんのこと何も知らない。  だからたくさん知りたいのに、今の関係を壊したくなくて何も聞けない。 「それじゃ、せめて今日のコーヒーとケーキのセットぐらい、ごちそうさせてよぉ。アタシだってお礼したいし!」  ママの明るい声に、優羽とカギヤが一瞬で現実に引き戻される。 「分かったよママ。今日はお言葉に甘えることにしようかな」  皆の厚意を、あまり(かたく)なに断っても失礼になりそうだと思ったカギヤは、困った笑顔になりつつ申し出を受けることにした。 「あれ!もうこんな時間じゃないか。どうも、ごちそうさまでした!それじゃ僕は、これで」
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