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【13】第二の標的
午後6時。
ガチャリと小さな音をたてて玄関のドアが開く。
「あ、カギヤさんお帰りス。ボク腹減ったスけど、晩ご飯は何時頃になりそうスか?」
自宅のマンションに疲れた顏をして帰宅したカギヤを見たマリネが、ずうずうしいヒモのような言葉を浴びせた。
「……ごめん、マリネちゃん。ちょっとだけ休ませて」
ぼそりと小さく呟いたカギヤは、うつむいたままマリネの横を通り抜けてリビング・ダイニングに工具を入れたボストンバッグを下ろした後、ベッドルームのドアをパタンと閉めて消えてしまった。
マリネは、夜はベッドとして使用しているリビングスペースの長ソファにうつ伏せに寝転がると、スマホに連絡先を入力する。
2コールで相手が出た。
「ん~お疲れス。班長の予感が当たったスよ」
「おぅ、カギヤの件だな?当たっちまったか?」
「そっス。さっきカギヤさん帰宅したんスけど、とんでもなく暗くて鬱陶しくて空気が重いス。優羽くんの自転車の鍵を直してあげるんだ!って浮かれて出て行ったのに。ありゃ確実に振られたスよ」
口をとがらせた容赦のないマリネの言葉に、アザミの苦笑いしたような声が答える。
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