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「……まぁ、アイツの性格から考えると、振ったのかもな」
「ん~もしそうなら、勝手に振って勝手に落ち込むなんてナルシストじゃねスか?カギヤさんが、鏡に映った自分にキスしてるとこなんて想像するとイラッとくるス」
「オメェは飛躍しすぎだ!まぁ、そう言ってやんな。オトナにはオトナの事情ってもんがあるんだよ」
「ボクもう二十歳過ぎてるス!ボクがオトナだってことは、班長もベッドで散々確認済みスよね?もう忘れちゃったなら、これからラブホで体に思い出させてあげ……」
「分かった!分かった!マリネはオトナだよ!」
そう大声で言ってから、思わずアザミは自宅のキッチンに独りでいると自覚しつつも、室内を見回してしまった。
ヒドウと恋人同士になってからは、以前のように相手構わず抱かれることはなくなり、それは気ままにベッドを共にしていた部下のマリネに対しても、例外ではなかった。
それだけ真剣にアザミもヒドウを愛しているのだが、過去の素行不良のせいで恋人に誤解されそうな言葉のやりとりには、つい神経質になってしまう。
そして、その弊害として、欲求不満となったマリネの矛先が、現在モグリ医師に向いてしまっているのだろう。
モグリにとっては、いい迷惑である。
「カギヤの勘はただの直感とは違って、刑事時代に現場で鍛えられた知識と経験、実力を伴った勘だと俺は思ってんだ。だからプライベートな感情で判断を間違うことがないように、もうちょいだけマリネがアイツの近くで見守ってやってくれよ、な?」
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