【13】第二の標的

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 アザミが煙草を咥えると、手慣れた様子で古びたライターを取り出して火を点ける。 「ん~分かったス。班長に言われちゃ仕方ないス。その代わり今度デートしてくださいスよ?」 「もちろんだ。ただし健全デートだぞ?ケーキバイキングとかさ」 「班長とボクが健全デートとか想像できねス……当日は雪が降りそうス」 「ははっ、んじゃ、頼んだぜ」  アザミとの通話が終わってスマホの画面を見たマリネは、ソファにうつ伏せになっていた自分の背後から見つめているカギヤが映りこんでいることに気が付いた。 「カギヤさん、気配消すの上手いスね。いつからいたスか?」  マリネが仰向けになると、それを見下ろすカギヤの表情は真剣だった。 「そんなつもりじゃ……班長と話しているみたいだったから、邪魔しちゃ悪いと思って静かにしていただけだよ。マリネちゃんは、班長のエスだったの?」  普通の人間ならば「聞かれてしまった!」と動揺しても不思議ではない状況であったが、マリネの(つら)の皮は極厚であり、心臓に生えた毛を三つ編みにしていてもおかしくない度胸の持ち主だった。  そういう意味でも、アザミの人選は的確だったといえよう。 「そうス。ヒドウくんが恋人になる前は、ボクが縛ったり、自作のオモチャで責める側だったス。班長って、かなりのドMスよ。特に焦らしに弱……」
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