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「ん~ここにいた方が、何もしないで好きなことできるから自宅より時間があるス」
「何もしないでって!もう、分かったよ……それじゃ、今からご飯を作ると待たせちゃうから、先に簡単にお茶にでもしようか」
そう言ってキッチンスペースの流し台へ向かったカギヤは、察していた。
マリネは適当なことを言っているようにも見えるが、班長であるアザミから命令を解除されない限り、ここを引き払って帰宅するという行動は絶対にしないだろう。
マリネをカギヤのマンションから帰らせるには、この泥洗作戦を完遂するしかない。
そんな仲間たちのやや強引な気遣いに振り回されつつも、改めて気が奮い立った自分を確かに感じてカギヤは心の中で感謝した。
そこでマリネに礼をしたい気持ちもあり、とても美味しいと話題の高級なチョコレートクッキーの箱を開封して洒落た陶器の菓子皿に盛った。
綾子が亡くなる前に、自分が食べてみて美味しかったら次にキーホールへ行った際、優羽に差し入れとしてあげようとお試し的に買っておいたことを思い出して、少し寂しさを覚える。
それをコーヒー二つとともにお盆に乗せてカギヤが戻ってくると、マリネがノートパソコンをテーブルに置いて操作していた。
ローテーブルがさほど広くないため、マリネの右隣にお盆ごと床の上に置き、カギヤもクッションを手繰り寄せて、お盆を二人ではさんで座るようにマリネの右斜め前に腰を下ろす。
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