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「あらぁ、買い出しついでにお客様まで連れてきてくれたの?優羽ちゃんたら商売熱心ねぇ」
ママが冗談めかして言うと、その小柄な女性はママへ近づいて立ち止まり、
「いつも優羽がお世話になっております。優羽の母です」
と、深々と頭を下げた。
「あらやっだ!優羽ちゃんのお母様がいらっしゃるなら、もっと気合い入れてお化粧すれば良かったわぁ!そういう時に限って梶矢さんも来るし!」
「え~!ちょっとママ、僕を巻き込まないでよ!」
いきなり矛先を向けられたカギヤが慌てて言うと、皆が笑った。
優羽の母、綾子はカギヤに勧められて、彼の隣りのカウンター席に座った。
綾子は、強化プラスチックの業界では中堅である竹プラ株式会社の経理担当として長年勤務しており、アパートで息子と二人暮らしをしてきたという。
今まで「仕事中の息子の邪魔になってはいけない」と、来店を我慢していた綾子だったが、今日は勤務が早く終わったこともあり、思い切ってキーホールを訪ねてみた。
すると、買い出しから戻ってきた優羽とちょうど店の外で鉢合わせたのだ。
綾子が初来店だということで、カギヤが今まで見てきた優羽の働きぶりを褒めた。
「優羽君は本当に明るくて気が利いて、キーホールの人気者なんですよ。立派な息子さんがおられてお母さんも安心ですね」
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