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「……梶矢さんは、とても思いやりのある優しい御方なんですね」
「え?いや、全然そんなことは」
綾子の言葉に、照れたカギヤが困ったような笑顔になる。
「優羽が、帰宅すると梶矢さんのお話ばかりするのがよく分かりました」
「僕のですか?僕から話題を見つけるなんて難しいと思いますが……見た目も性格も平凡すぎて」
「梶矢さんが、梶矢さんがって、いつも嬉しそうに息子からお話を聞かされていたものですから、今日お会いできて良かったです」
「ちょ……母さん!余計なこと言わないでよ!」
綾子の言葉が聞こえた優羽が、顏を真っ赤にして抗議する。
「あら、ごめんなさい。いつも優羽が言ってた梶矢さんと会えたんだもん。母さんも嬉しくて」
そう言って屈託なく笑った笑顔は優羽とよく似ていて、素敵な親子だなとカギヤは心から思った。
今日の営業時間が終わり、優羽と先輩である篠原が小さなロッカールームで帰り支度をしている。
「……なぁ、優羽……好きなのか?」
「篠原さん?何がですか?」
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