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「そうだよな。優羽が優しいのは分かってたんだけどさ、つい……。あ、もしかして『あんたと一緒にするな!』って思われちまったかな?」
冗談めかして言った篠原の言葉に優羽が笑う。
「他人のことをそうやって心配してくださる篠原さんの方が、僕より優しいですよ。それではお疲れ様でした!お先に失礼します」
帰り支度の済んだ優羽は篠原に向かってお辞儀をすると、キーホールから近くにある駅前の駐輪場に向かった。
優羽と母、綾子の住むアパートは、駐輪場から自転車で10分の場所にあった。
一方、篠原が独り暮らしをしているアパートはキーホールの近くにあり、自転車は使わず方向も違うため帰り道は別々だった。
「こんばんは!今日も自転車ありがとうございました」
優羽は、駐輪場の出入り口にある管理室の中で事務椅子に座ってモニターを見ていた管理人に、笑顔で挨拶をした。
「やぁ、こんばんは!優羽ちゃんの元気な声を聞くと、おっちゃんも疲れが取れるよ!またキーホール行くね!」
「ぜひ、お待ちしてます!」
利用者の多い駅の前に建てられた大きな立体駐輪場は、屋内型のコインパーキングとなっていた。
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