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「ただ今、作戦から帰還しました。あとは片岡警視長への報告のみとなります」
「よぉ、お疲れさん。カギヤから俺への報告は既に受けている。よくやったな」
「96」の班長という立場からヒドウへねぎらいの言葉をかけた後、アザミの声は愛しい恋人に囁く柔らかなものへと変わった。
「やっと声が聞けた。一ヶ月ぶりだな」
見事に作戦を終えたばかりの「96」の班員、ヒドウの毅然とした声も、大切な恋人への穏やかなものに変わる。
「……そうですね、お元気でしたか?」
「いや、ダメだね」
「え、体調を崩されていたのでしょうか?」
ヒドウが心配そうに尋ねると、アザミが声をひそめた。
「オメェが任務の期間、自分で弄るのを我慢して無事を祈ってたんだぜ?声を聞くだけでイキそうになるくらい、オメェに飢えちまった」
まるでスマホの受話口からアザミのフェロモンが漏れ出したのではと錯覚してしまうほど、甘美な痺れがヒドウの全身を走り抜ける。
「それは嬉しいです。ありがとうございます。ですが今、煽られると困ります。自分これからバイクに乗りますので」
アザミの楽し気な笑い声が、向こう側から聞こえた。
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