それはまるで

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   いつまでも立ち話をしてしまいそうなので、私たちはとりあえず店内に入った。  一月四日、午前中のイートインにはもちろん客は少ない。ボックス席をふたつ陣取り、私たちは優雅にケーキを食べながら、ひとしきりこの一年間の近況を話した。  早苗ちゃん、太一くん、美保ちゃんはそれぞれ就職や大学の寮に入ったため実家から巣立っている。おじさんは時が経つにつれ少しずつ丸くなり、今はまあまあの関係性が取れているようだ。  そして、ずっと忙しくしていた透くんにも去年、彼女ができた。私には、それが一番の報せだった。 「はい、お年玉」  散々お喋りをしアイスティーも底をつくかという時、不意に言われた。  私は透くんが差し出したポチ袋を見つめる。  ポチ袋はふたつあった。片方はやたらと大きく、私は思わず無言でその中身を見た。  その中には軽く、札束、と言えるような量の金額が入っていた。 「え……えっ? 何これ?」 「総額、しめて……二十一万八千円なり!」  透くんが、昔の私の口癖を真似する。私は驚きのあまり、しばらく言葉が出なかった。 「……やだ。まさか、私が渡してたお金全部数えてたの? やだやだ、無理。こんな大金受け取れない」 「その大金を、僕はしゃあしゃあと受け取ってきたんだから。僕はもう人並みには稼いでるし、受け取って。あ、こっちは可帆ちゃんの分のお年玉。五千円ね」  
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