それはまるで

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   金額ではなく、私はその、透くんの変わらない綺麗な心に涙が出そうになった。  ありがとう、と小さく言い、それを受け取る。透くんはいつまでもにこにこと笑顔でいた。 「……高校生の頃。僕のこと、守銭奴で、意地汚くて、ミジメったらしいやつって思ってた?」  透くんが聞く。それは嫌味ではなく、ただ本心から聞きたいだけなのだと思った。  私も素直に答える。 「ううん、全然。ずっとね……」  なんだか、告白しているような気持ちになった。 「……ずっと、天使みたいだなって、思ってたよ」  まるで、天使。  私は高校生の頃、あのお年玉は透くんにあげたつもりだった。けれどあのとき、私はあのお金で透くんから清らかな心を買ったのかもしれない。  それは人生の中で、とてもお金には変えられない大切なものだったように思う。  私は泣きそうなのがバレないように、ふうと大きく息を吐くと、聞いてみた。 「……ねえ。このお年玉で何買えばいい?」 「んん……可帆ちゃんのおもちゃでも、生活費でも、何でもいいよ。でも五千円の方は、ちゃんと可帆ちゃんが大人になるまで貯金しておいてよね。そっちはこの子のお年玉なんだから」 「ふふ、そうだね。……やっぱり私のママのお年玉、全額お父さんに取られてたんでしょ」  透くんは「パチンコ代」と言って、演技っぽく悲しい顔を作る。私は笑った。でも、全ては過去であり、今は幸せなんだ。  いつか結婚して、子供が生まれて、私もお年玉をあげられる日が来ることを祈ってるよ。  私の、天使。  
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