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長い睫毛。優しげな眼差し。私も一緒にコートを着ながら、一年に一度しか拝めない、その少し高いところから落ちてくる綺麗な視線を味わう。
でも、見た目の話じゃない。
彼は心が美しい、と思う。
「……無理だった。おかしいなあ、高校二年生って人生で一番の花盛りじゃなかったっけ? やっぱりアレかな。心がブスだから」
「そんなことないよ」
透くんが笑う。どんぐりが転がるような小さい声で、品のいい笑い方だなと思う。
「可奈ちゃんがブスなら、僕はもっとブスだよ」
そう言って逸らされた透くんの目は、私には穢れの無いクリスタルのように見える。
透くんの家はここから電車で十駅程度で、割と近くに住んでいた。
散歩がてら、私が駅まで四人を見送りに行くのも毎年恒例だった。日の暮れかけた住宅街をゆっくり歩き、従兄弟同士、水入らずの会話を楽しむ。
毎年の。
恒例の。
私は巾着袋を取り出す。
「透くん、これ」
駅の近くまで来たところで、私はそれを透くんに差し出した。
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