それはまるで

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  「そっか……よかった。役に立ってて」  私は椅子にもたれ掛かり、アイスティーをズルズルと飲んだ。  だけれど、今日聞きたかったことはそこではなかった。聞くのには勇気がいった。透くんを傷付けるだろうからだ。自分が救われたくて、答えが欲しくて。そんな質問だったからだ。  それでも、私は手元のアイスティーに視線を落としたまま、呟いた。 「……透くんはさ、ミジメな気持ちになったりしないの?」  そこまで言って、その先は言葉にならなかった。  その質問にはいろいろな意味合いが込められていたが、やはり口が重くなり、最後まで話すことができなかった。 『親に命令されて、毎年兄弟を連れて、然程親交の無い親戚周りをさせられて、ミジメじゃないの?』 『お年玉目的で来ていることが親戚中にバレてるのに、ミジメじゃないの?』 『同い年の従兄弟の女の子のお年玉まで素直にもらって、ミジメじゃないの?』  透くんの家庭環境のことは、私もママも分かっている。透くんの父親はママのお兄さんだから。おじさんはママと違って昔から気性が荒くて、酒に、パチンコに溺れているらしいと聞いていたから。  おそらくおじさんは、今この瞬間もギャンブルに勤しんでいるのだろう。ママが毎年わざと相場より少し多めに入れている透くんたちへのお年玉は、どれくらいがパチンコに消えていくのか。ママは透くんと何度かその辺りのことを話したことがあるらしいが、透くんは「今はとりあえず、まだ、大丈夫です」と言ったという。  ぼんやりとそんなことを考えていると、透くんが不意に笑った。 「やっぱり可奈ちゃんは、優しいね」  
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