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外に出ると、雪が降り出していた。
今年の初雪に、三人がきゃあきゃあとはしゃいでいる。本降りにはならないと天気予報で言っていたから傘はまあ大丈夫だろう。
「じゃあね」
「また」
また、来年。電車賃も馬鹿にならないからね。
私は手を振る。
……ああでも。
私が透くんの家に遊びに行けばいいのかもしれないけれど。なんだか透くんは私の聖域で、無闇に踏み込んではいけないような気もした。透くんがやってきてくれるから、会える。毎年恒例の、いつもの。
私は楽しそうにホームではしゃぐ三人と、ベンチで勉強をしている透くんを影から見送ると、帰路へついた。
雪が舞う。キラキラしたこの雪が、心の穢れもきれいに落としてくれればいいのに。
透くんの視線や言葉には解毒作用があるけれど、やっぱり、やっぱり難しい。
それでも私は勇気を出して、スマートフォンを取り出した。
『こちらこそ遅くなったけど、あけましておめでとう! こちらは毎年恒例の、常夏ハワイバカンス中です! ……なんちゃって、嘘なの。ごめん。今、実家です。学校始まったら、ちゃんと話すね』
道端に足を止め、私は二十人余りの友達にメールを返信し続けた。
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