それはまるで

9/13
前へ
/13ページ
次へ
   透くんは、強くて美しい。  私だったら、きっと心が負けてしまう。貧困のつらさ、境遇のつらさもあるだろうけれど、そこではなくて。  邪魔をするのは、プライド。  どうでもいい、私の胸の奥に潜んでいるそれが、きっとお年玉をもらうために親戚を回るなんてことをさせないと思う。 『友達の中の誰よりも裕福で、幸せな自分を見せたい』 『透くん程頭はよくないけど、友達に自慢できるような大学に進みたい』  透くんが言った、『三人を守りたいから』――そんな目的とはかけ離れた、どうでもいいプライドが、私に嘘をつかせたり興味の無い大学の学部の勉強をさせる。  他にもたくさん、たくさん。この感情が自分を苦しめている。  でも、そんなことは終わりにしなければと思う。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加