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 この世の仕組みは、簡単だ。  いわゆる『異界』の最奥にある神殿、そこの地下金庫の中に保存されている一冊の分厚い本に従って「すべてのこと」が回っていくからだ。  この本、タイトルを『この世の成り立ちについてのみならず重要なあれこれを逐一記してある最も貴重で基準となる本』という。  いくらなんでも長すぎるので、いつの頃からか『この本』と呼ばれている。  まちがっても「これ・それ・あれ・どれ」といった類でつけられた「この」ではない。長いタイトルをそれなりに略した結果の「この」である。  そして著者名は、わからない。この本が書かれた時代は、名前ではなく著者の似顔絵を表紙に記すのがトレンドだったらしい。ゆえに、著者の顔は伝わっているが名は伝わっていない。  しかも印刷技術が未熟で細部が部分的にしか伝わっていないのが惜しいのだが、相当の美男だったと思われる。  それはともかく、本を開いて数ページすると『この世の成り立ち』という項目がある。  そこにはページ全体をつかって『1、この世の頂点には異界が存在する。2、すべての生きとし生けるものは、すべてこの本の如くせよ』などと書いてある。       
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