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その本によれば、この世界は、異界・天界・人界・地獄で構成されている。
最上界は「異界」。偉い人々がいる場所である。
しかし、幻想的な場所でも神秘的な場所でもない。とにかく困ったら駆け込む場所である。裁判所であり図書館であり公民館であり相談所であり……大規模なお役所と言っていい。
その下には「天界」が存在し、「天使族」と「悪魔族」が暮らしている。
広い大地の真ん中に深い渓谷と高い山脈があり、そこを境にして「天使の国」「悪魔の国」が存在している。大使館もあれば国交もあり、実際のところは仲良くやっている。
その下には「人界」がある。ここが最も面倒くさい場所であるため、異界も天界も「できることなら関わりたくない」と思っていて、異界の人々も天界の人々も、原則として人界には干渉しない。理由はひとつ、さして興味がないからだ。
そもそも、なぜ何かと面倒な人界が存在するのか、誰も知らない。
あまりの厄介さに過去に何度も、人界消去計画が動き出しているが、
「『この本』の第3657条に、人界は必ず存在していなければならない、と書かれてある以上、存在していなくてはならない」
と、異界がその都度警告を発し、今に至る。
ちなみにこの本の条文に違反した場合どうなるか。
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