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「そもそもの話、なにゆえ己らよりも地位の低い人間の定めた善悪にそって天使と悪魔が生きていかねばならぬのか! 大いなる不満である!」
魔王は、青空が広がる魔界の空に向かって吠えた。
家臣たちも「不満である!」と唱和する。家来どもと心は一つである。
「これは脈々と受け継がれている天使と悪魔共通の人類に対する不満と言ってもいい!」
魔王は、はたと気が付いた。
不満ならば「異界最高裁判所」に訴えてみればよいのだ。
「よし、異界へ参ろうぞ!」
思い立ったが吉日。魔王の側近がその場で指を鳴らし呪文を唱えた。異界への扉は、すぐに開いた。
「さあ、出発!」
えいえいおう、えいえいおう、と勝鬨をあげ、どどどど――と勇ましく駆け込んだ魔王主従。
「お静かに! ここは役所ですよ!」
スーツ姿に黒縁メガネの女性に窘められ、一斉に縮こまった。
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