プロローグ――誘引

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 今日これからこの修道院で会合が開かれる……ということはつまり、神楽以外にも両組織の重鎮がここに集まるわけだ。いや、もう既にあの本館の中に集まっているのだろうか? どちらにせよ、下手に関わると面倒なことになりそうだ。神楽との話が終わったら、さっさと帰ることにしよう。  ナイツ・伏王会間の会合、そしてアルゴス院という組織についてより深く尋ねたいこともあるにはあったが、今はそれより、もっと聞きたいことがあった。 「会合の都合があって待ち合わせ場所をここにしたっていうのはわかった。でも、俺が聞きたいのはそんな話じゃないんだ。そろそろ本題に入ってくれるか」  神楽は肩をすくめるようにして笑う。 「せっかちだな。……まぁいい。君はそのためにここに来たのだものな。君の父親……戌井千裕が殺された事件の真相を知るために」 「……まず確認しておきたい。どうしてあんたがそんなことを知っているんだ?」 「忘れたか? 二ヶ月前のあの事件が起こる直前まで、私はナイツの内情を探るために岸上豪斗(きしがみごうと)を盗聴していたんだぞ。あの日、彼はなにを君に伝えようとしていた?」 「……そうか。あの人は俺に、あの事件の真相を知らせようとしていた。あの人のことを盗聴していたあんたは、盗聴器越しにそれを知った……ってことか」 「そういうことだ」  岸上豪斗は二ヶ月前に夕桜支社で、伏王会と通じていたスパイによって殺害されている。あの日、冬吾は豪斗から、「千裕の死の真相を教える」と電話で打診を受け、待ち合わせ場所である喫茶店に向かった。そして……神楽の策略に嵌められ、事件に関わることになってしまった。岸上豪斗がどういう経緯で事件について知ったのか、という疑問は依然として残るが……。
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