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……思えば、あの豪斗からの電話がすべての発端だった。
「――あの時と同じ、だな」
神楽は、不敵な笑みを浮かべて言う。
「二ヶ月前もこうして、私は君を待っていた。あの時は、呼び出したのは私ではなかったがな」
豪斗から呼び出されて向かった喫茶店で待ち構えていたのは、神楽だった。あの時は、まさか自分があんな目に遭うとは想像もしなかった。
「あの日……喫茶店で君を待っていた時には、想像もしていなかったよ」
偶然――なのだろう。思考が神楽の言葉と同調する。
「それにしても、ここまでしぶとく生き延びるとはな。幸運も大いにあっただろうが、それだけでもないのだろう。君の持つ力が君を助けた。――認めよう。君は、私が想像していた以上の男だった」
「それは……褒めてるつもり、なのか?」
「くくっ……無論、褒めている。べた褒めだとも」
からかうように言う神楽。何を言いたいのかがわからなくて、不気味だ。
「君のことは充分に認めている。だからこそ……君には今回の計画の、最も重要なピースとなってもらうことにした。そう……君こそが、相応しいと思ったからだ」
「……ピース? 計画……って?」
「……知りたいか?」
神楽は、喉の奥で笑いを押し殺すようにしながら、おもむろに立ち上がる。座る冬吾のすぐ目の前に移動してから、僅かに身を屈めた。冬吾を少し上から見下ろす形。
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