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「んっ……ふぅ……」
神楽から冬吾へ、重ね合わせた唇の隙間から、熱い吐息が送り込まれた。神楽に対して抱いていた疑念も警戒も、全て霧散してしまいそうな心地良さ。麻薬じみた快楽。蕩けるような、甘く、優しい接吻だった。叶うのならば、このままずっと続けてほしいと望んでしまいそうなくらいに。
神楽が唇を離す。色っぽく息を吐いてから、彼女は冬吾の顔を見て微笑した。
「ふむ……君のそういう顔は初めて見るな? 今ので気持ち良くなってくれたのか? ……嬉しいぞ。うん、よしよし。かわいいな、君は」
神楽は幼子をあやすようにして、左手で冬吾の頭を優しく撫でた。撫でながら、冬吾の耳元へ向かって小声で囁く。
「今まで、ひどいことしてきてごめんな……。信じてくれないだろうけど、全部仕方なくしてきただけで、本当は嫌だったんだぞ?」
……本当に?
「本当は私、君のことが好きなんだ。信じてくれなくてもいい。でも私は君のことを、何よりも大切に思っているんだからな?」
そんな馬鹿な、あり得ない。いや、でも、しかし――頷いてしまいそうになる。神楽の言葉は、その声が魔力を持っているかのように抗い難い。意識が安心感と幸福感の海に沈み込んでしまいそうな感覚。
神楽は、冬吾の理性を溶かし尽くすような甘ったるい声音と口調で言った。
「んー? なんだ? もしかして、もっとしてほしいのか? ふふっ。言わなくても、君の顔を見ていればわかる。もちろん、いいぞ。ほら……」
神楽が顔を寄せてきて、また唇を重ねる。甘い接吻の快楽で、正常な思考が上書きされていく。
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