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禊屋たちが走り去ったのを確認してから、織江は男たちに向き直った。
「あーあー。逃げちゃったよ、あの赤髪の女の子」
「もったいねー」
男たちは口々に残念がるようなことを言う。しかし、逃げた禊屋達を追おうとはしないようだった。
いやに簡単に逃がすんだな……。拍子抜けというかなんというか。まぁ、あの二人を遠ざけられたのだからよしとするか。
「あのさーそこのお姉さーん!」
織江に向かって呼びかけた男は、右手にボウガンを持っている。先ほど禊屋に向かって矢を射かけた男だ。次の矢はまだつがえていないので撃たれることはない。
「お姉さんさ。今、あの子のこと逃したよね? 俺らあの子に用があったんだけど? どーしてくれるわけ?」
織江は男を睨みつけつつ返す。
「……お前らさっき、殺すだのなんだのと言っていたな。……答えろ。『誰に頼まれた?』」
「頼まれたぁ? はっ、何のことだかわかりませんねぇ」
男は大げさに両手を広げてしらばっくれる。
「つーか、質問に質問で答えんなバーカ! 訊いてんのはこっちだろ? オメーがあの子を逃がしちゃうから、俺らが迷惑してるわけ! どーしてくれんのって!」
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