第五章――凶なる襲撃

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「あがッ……!?」  男はふらついてボウガンを手から落とす。  脳を揺らす高速の回転肘による一撃。おそらく自分がどう殴られたのかさえ認識出来ていないだろう。  織江はすかさず男の襟首を右手で掴み動きを封じてから、相手の股ぐらを蹴り上げる。 「ふぐッ……うぅ……」  男は痛みで悶絶するように短く呻いてから、金的を手で押さえたまま両膝をついた。 「てめぇッ!」  織江の左方向から別の男が殴りかかってくる。織江は右手にボウガン男の襟首を掴んだまま、向かってくる男の顔面を左の上段回し蹴りで蹴り飛ばした。男は地面に倒れ、織江が言う。 「踵のキスの味はどうだ? 卒倒しそうなほどイイだろ?」 「く……くそっ……!」  男は蹴られた口元を手で押さえながら立ち上がり、織江から距離をとる。他の男たちは織江の動きから只者ではないとわかって警戒したのか、後続はないようだった。 「こ……の……ぜってぇ、ぶっ殺してやる……!」  地面に膝をつき顔中に脂汗を浮かべたボウガン男が、織江を睨み上げて言う。襟首を掴んでいる織江の手を引き剥がそうとして手をかけてきたので、織江はもう一度男の金的を蹴った。カエルの潰れたような声を出して男が縮こまる。
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