第五章――凶なる襲撃

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「く……くそぉ!」  男は破れかぶれになったように殴りかかる。  織江は相手ののろい左パンチを最低限の動作で右に躱すと、今度はこちらの左ボディブローを食らわせた。男が呻いたその隙に相手の右側に回り込みつつ、右足で相手の左膝裏を小突いて体勢を崩すと――右足を引き戻して、相手の曲がった左膝の外側へ足裏を当てるようにしてサイドキックを打ち込んだ。「パキッ」という音がして、膝がぐにゃりと内側へ曲がる。 「ううあぁっ!!」  男が悲鳴を上げて崩れ落ちる。相手の顔の位置が下がったところで、織江はその顔面に向かって右の肘打ちを入れた。鼻をへし折られ、男は仰向けにダウンする。 「このっ……!」  今度は既に起き上がっていた髭の男が蹴りを打ってくる。織江は顔の横で左腕を構え相手の右足上段蹴りを難なく受け止めると、そのまま右足を手で掴む。そして相手の伸びきった足に、膝の上から自分の右足を引っかけると―― 「おっ……おおっ!?」  そのまま自分の膝を曲げ、相手の足を絡め取るようにして引き倒した。男は足を取られたまま転倒する形になる。こうなってしまえば男に抗う術はなく、無防備なまま処刑の執行を待つのみ――織江は、その足を可動域外まで捻って折った。
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