第五章――凶なる襲撃

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「このクソアマがぁぁ!」  後ろから声。先ほど壁に投げ飛ばしたフードの男が復帰したようだった。男は完全にいきり立って織江に殴りかかってくる。パンチを何回も打つが、織江は少しずつ後ろに下がりながら全ての攻撃を捌いて躱す。連打の後の大振りな右アッパーに合わせて、相手の右拳に左肘を打ち下ろした。 「あっ……がっがっ……!」    拳を砕かれて男は痛みに悶絶する。そうして不意に頭を下げたところを織江は見逃さず、膝蹴りを叩き込んだ。 「うぅ……ぐうぅぅっ……!」  ノックダウンさせるつもりで蹴ったのだが、意外にも男は耐えたらしい。鼻血を垂れ流しながら男は織江を睨みつけた。織江は口笛を吹いて言う。 「やるじゃん」  これは挑発ではなく素直に感心しての言葉だったのだが、男はまた馬鹿にされたと感じたようだった。更に興奮した様子で向かってくる。  男は左の中段蹴りを繰り出そうとするが、織江は右足で相手の左膝を押すように蹴ることでその出かかりを潰すと、そのまま相手の軸足も蹴り飛ばして転倒させた。
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