第五章――凶なる襲撃

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 織江は相手が起き上がろうとするのを待ってから、更にその顔面を横からつま先で蹴り抜く。男は勢い良く二メートルほど転がってから、動かなくなった。  これで三人……。あともう一人いたはずだが……?  さては逃げたか――と思ったら、少し離れた位置にその男はいた。小太りの男だ。 「うっ……動くな! 動いたら撃つぞ!」  男は矢をつがえたボウガンを構えていた。最初に仕留めた男が落としたものを拾ったのだろう。怯えているようで、構える手が震えていた。 「間違えたな」  織江は小太りの男に向かって言う。男は狼狽えた様子で、 「間違えたって……な、何が!?」 「大方、動いてる私に命中させる自信がないから『動いたら撃つぞ』なんて言ったんだろ? その言葉に素直に従って動きを止めたところをバン!ってわけだ」 「くっ……」 「浅いんだよ、考えがさ」  そう脅しておいたほうが安全に逃げられると考えた可能性もなくはないが、わざわざそんなことをせずとも、逃げるチャンスなら幾らでもあった。
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