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「でもどうせ撃つならそんな宣言なんてしないで、私が気づかないうちに撃つべきだったんだ。そうしていれば……まぁ……三パーセントくらいは私に当たる確率があったかもしれないな? でも今は……たとえお前が一万発そのボウガンを撃とうが、一発も当たらないと断言できる――私は、躱せる」
「そ、そんなわけ……この距離だぞ?」
「それじゃ、試してみるか? といっても、今あるその一発をはずせばお前、終わりだぞ? 次の矢をつがえる時間なんてないからな。よぉく狙えよ?」
「うっ……うぅ……」
男との距離は三メートルちょっとというところ。織江は少しずつ歩みを進めてその距離を詰めていく。
「ほらどうした? さっさと撃てよ。どんどん当てやすくなっていくぞ? キスできる距離になるまで待つつもりか?」
「く、くそっ……舐めんなッ!!」
男は決心したようにボウガンを構え直す。織江はタイミングを読んで駆け出すと、男の約一メートル手前で跳躍した。ほぼ同時にボウガンから矢が放たれたが、既にその軌道上に織江の身体はない。織江は空中で宙返りし身体を一回転させると、男の頭を太ももで挟み込むようにして肩に乗る。
「ざんねんっ」
織江はしたり顔で笑う。続いて男の頭を両脚で挟み込んだまま、相手の後ろ側へ倒れ込むように身体を捻ると――その勢いを利用して、両脚で相手を投げ飛ばした。織江は受け身を取って着地、一方、男は頭頂部から地面に叩きつけられぴくりとも動かなくなる。
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