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入り組んだ路地を進みながら、乃神は携帯電話でシープに連絡を入れる。
「――トラブルが起こった。すぐに車を西側の通りに回してくれ。ああ、路地を反対側に抜けたところだ。いやお前はじっとしていろ、却って厄介になる。詳しくは後で話す」
相手はもっと説明を求めたがっていたようだが、乃神は無視して通話を切った。電話をしまいながら、疑問を投げかける。
「それにしてもあいつら……何なんだ? なぜいきなり襲ってきた?」
「わからないけど……あの人たちはあたしを殺すつもりでボウガンを撃ってきた。それにさっきのあの口ぶり……なんだか、誰かに頼まれたみたいに感じたよ」
「あの男たちは誰かに頼まれて俺たちを殺そうとしたということか? しかし――」
何か言いかけたところで乃神は歩みを止める。その視線の先には、道の向こうから歩いてくる人影があった。
その人影が、奥の暗がりから街灯の当たるところまで出てくる。ダウンジャケットを着た若い男だ。男は美夜子たちとは目も合わせようとせず、美夜子の側から見て道の左端を歩いていた。こんな時間にこんな場所で、何をしているのだろうか?
いや、自分たちが言えた言葉ではないと思うが……。
男とそのまますれ違いそうになって、美夜子は思わず声をかけてしまった。
「あの……そっちの方、行かないほうがいいかも」
「へっ?」
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