第五章――凶なる襲撃

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 男はいきなり声をかけられて、驚いたような表情をする。男の歳は二十半ばというところ。前髪長めのツーブロックでワイルドな印象だが、垂れ目で愛嬌も感じられる顔つきをしている。 「あー……行かないほうがいいって、なんでっすかねぇ?」  織江が先ほどのチンピラ集団を相手にまだ残ってくれている。それを一般人に見られたら厄介なことになりそうだ。上手く誤魔化さなければ……。 「えっと、その……そう! 向こうで派手なケンカ、してたみたいだから。近づくと巻き添え食らっちゃうかも」 「ケンカ……。ああ、そうですかい。こいつはどうもご親切に。近づかないようにしますわ」  男は軽く左手を振って歩き去ろうとする。 「おい待て」  それを、乃神が呼び止めた。その手には、彼が隠し持っていた自動拳銃――グロック17が握られている。既に銃口を男に向けて構えていた。
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