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「ちょっ……乃神さん!?」
「禊屋、ぼーっとしていて気がつかなかったか? こいつ……明らかに『こっち側』の人間だぞ。雰囲気でわかる」
「えっ……!?」
美夜子は驚いて男の方をもう一度見る。男は困惑したような様子だった。
「こっち側とかなんとか……何のことだかわかんないっすけど。その銃、まさか本物じゃないっすよねぇ?」
乃神は銃を構えたまま、男に向かって言う。
「茶番はもういいんだよ。さっさとその右手に隠し持っているものを見せろ。ゆっくりとな」
「…………はぁ。ったく、慣れないことはするもんじゃねぇなぁ」
男は観念したように、身体の陰に隠していた右手をゆっくりと見える位置に出す。その手にはサイレンサーを取り付けた自動拳銃が握られていた。シグザウエルP229――性能重視の高価な銃。そこらのチンピラが手に入れられる代物ではない――この男は、殺し屋だ。
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