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礼拝堂の建物は木造で、外から見る限り、ややこぢんまりとした印象を受ける。祭礼用の施設としては小さい部類に入るだろう。入り口は木製の観音扉だが、かなり分厚いようで、相当頑丈そうに見える。
「ねぇあんた、戌井って人?」
「わっ!」
不意に声をかけられたので、冬吾は驚いて思わず後ずさりしてしまった。建物の右側の陰から、声の主が姿を現す。
身長160くらいの小柄で、スーツ姿の、美少年だった。歳は十五、六――いや待て。……本当に男なのだろうか?
未成熟ながらも西洋人形のように整った顔立ちは、少女と言われても充分通じる。単に美形というだけではない。その不敵な笑みには、仄暗い妖艶さすら漂う。目元はややキツい印象を受けるが、それがむしろ、微毒めいた色気を増させる要素として成立していた。肌は真っ白、髪は肩に届く程度で男にしては長めだし、艶もある。声の感じも中性的。男装した美少女のようにも思えた。
「あれれー? 聞こえなかった? あんたが戌井って人かどうか訊いたんだけど?」
「そ、そうだけど……」
「あ、やっぱりそっかー。いやー、なんか怖い感じのお兄さん来てるなーと思ったんだよー。聞いてたとおりだね!」
「怖いって……」
自分の目つきが悪いことは自覚していたし、ほんの少しだけ気にしてもいたが――こうまであっけらかんと言われると傷つくより前に呆れてしまう。
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