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気になる過去を、アッケラカンと話す晃司が恨めしくなり、大輔の声は小さな棘を含んでいたが、晃司は気づかないのか気にしないのか、平気でニヤニヤしている。
「そうそう。五分と見てられなかったけどな。周りは普通のカップルばっかで」
「そりゃあ、そうでしょうね。男二人でそんなところに突撃して、周りの人に見られたりしませんでした?」
「うーん、みんな自分たちの世界に夢中で、意外と見てなかったかも。でも、俺たちは恥ずかしくて、必死でバイトの帰りに偶然通りかかった、みたいなフリしたなぁ。誰も、俺たちなんかに興味なかっただろうにな」
昔の恋人との思い出をあんまり楽しそうに話すから、さすがに大輔が不機嫌になる。晃司はいつも、デリカシー不足なのだ。
「俺なら、男二人でイルミネーションなんて絶対ムリです。よっぽど、二人はラブラブだったんですね」
「若かったから、クリスマスとかちゃんとやりたかっただけだよ。でも……今なら、俺は恥ずかしくないかも、大輔とイルミネーション見にいくの。むしろ、イケメンの彼氏を自慢したいぐらい」
拗ねた恋人の頬を、晃司が愛しそうに撫でる。それだけで大輔の機嫌は直ってしまい、単純な自分に呆れた。それでもまだ機嫌が悪いフリをして、唇を尖らせる。
「俺は……恥ずかしいですけど。だから、こういう二人っきりのクリスマスの方がいいです」
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