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……魔術の苦手な自分にとって、剣は唯一自信の持てる物であり、例え、相手が先生であったとしても、ここまで全く実力で迫れないとなると、はっきり言ってプライドはかなり傷付く。
一瞬当てられそうな所まで行ったのも、先生が遊んでたからだと考えると余計に。
「やっぱり遊んでんじゃん」
「あ……ごめん、つい……」
そう言った所で先生は言葉を止め、何か考えるようなポーズを取った。
「今日ここに来る前に何かあったかい?」
いきなり先生にそう言われてハッとした。青天の霹靂に打たれたような感じがした。
「今日の君はとても良い剣筋をしていたけど、一瞬、何度か何か他の考え事をしているような、集中の逸れた剣をしていたからね。君は剣を持つととても集中力のある子だかららしくないなと思ってね。そう……例えば……ここに来る途中誰かで可愛い女の子を見付けたとか?」
「……女の子ではないですけど」
「……へえ!……それなら可愛い女の子を見付けたと思ったら男の子でショックだった……とか?」
「男の子でもないらしいです」
「男の子でもないらしい?それはつまり本人に聞いたのかい?」
「はい」
うなだれたまま答える。
そうだ、今日その事があってから僕は先生の家に着くまでその事をずっと考えていたし、稽古の時も、きっと集中してるつもりでもどこか片隅でその事を考えていてしまったのだろう……。
そう思うと、自分の至らなさに俄然がっくりとくる。
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