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……剣術稽古か。
僕自身、身体を動かすのは全く嫌いな訳じゃない。
むしろ魔術学校の休み時間や、授業が終わった後にみんなと一緒に町の外に出て遊ぶのはほぼ僕の日課とも言える。
だけど……。
あの……先生……笑顔の皮を被り、地獄の穴からこの町に這い出してきた獄卒……ゲオルグが一緒の時は別だ。
もし初めてあの鬼師範の元で1日を過ごす人間が居るとしたら、
その人間は恐らく翌日一歩もベッドから外に出られないに違いない……。
それほどに先生の稽古はハードなのだ。
そして真に恐ろしいのが、その稽古のハードさに反比例するように、先生がとてつもない人格者である事だ。
常に朗らかな笑顔を湛え。
生徒一人一人の僅かな向上も見逃さず、しっかりとそれを褒め、本人のやる気を最大限に引き出す。
問題点に対して的確な指摘を与え、どうすればより良くなれるのか、常に道を示してくれる。
180cm以上はある長身痩躯に加え、普段剣術を教えている人間には見えないような穏やかな知的な雰囲気の漂う美形でもある……。
故に町中、いや町の外の女子からもそれはとてもとてもモテていて、毎日手渡し郵便問わず送られるラブレターの処理に困っている……正直かなり羨ましい。
そしてこんな絵に描いたような完璧先生に、
笑顔で「じゃあ今日はこれこれをやってもらうからね」と言われた日には、逆らえるのはそれこそ人の心を捨てた悪魔くらいなものだろう。
その事を知ってか知らずか、
先生はやはり僕らに笑顔でとんでもなくハードな課題をこなすよう要求してくるのだ……。
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