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「はぁ……気が重い。」
だがそうも言っていられない。
もし遅れたりしても先生はそれを咎めて怒鳴ったりはしない……が。
「じゃあ今日は遅れた分ちょっとだけ集中してやろうか☆」とか言ってさらに稽古がハードになる。
休んだりした場合は言うまでもないだろう。
そんな訳で壁に掛けてある稽古用の木剣を取り、僕は家を出る。
石造りの城下町を抜けて緑のある方へ向かう。
稽古が始まるまではまだ時間の余裕があったので、途中森に寄り道しておやつ代わりに木の実を採る事にした。
……一つ心配だったのが、この頃この森の近くで魔物が出るという噂がある事だ。
大分前にこの辺りの危険な魔物は騎士団の仕事によって一掃された筈だったのだが。
「もしかして『魔王』が復活し始めてるとか……なーんてあるワケないかハハハ。」
魔王とは数百年前に人間を裏切り、魔物を操って人間に全面戦争を仕掛けたと言われている魔法使いだ。
この戦争で人間側はかなりの死者を出しつつも魔王を倒したと言われているのだが、
魔王の支配を逃れた魔物達は数百年経った今でもまだ完全には駆逐出来ておらず、
未だ頻繁に人間を襲い被害を出しているというのだ。
「今がこんだけ平和なのも、全部昔の人らが頑張ってくれてたからなんだよなー…。」
そんな過去への感慨を抱きつつ、
朝の涼しい森を散策していると、木の側に三人の人影を見付けた。
よく見ると、一人に対して二人が何か因縁をつけているように見える。
「……なぁ、だからさぁー。ちょっと見せるだけでいいっつってんじゃん?なんなの?俺らなめてんの?」
「マジで。人間の裏切り者のオトコオンナの分際で調子乗ってんじゃねーぞ!?」
さらによく見ると、一人の少女に対して二人の少年が囲んで腕を掴んで逃げられないようにしている事に気付いた。
少女は手をグッと握り俯いたまま何も喋らないようだ。
肩まで伸ばした黒髪で顔が隠れて見えない。
少年は片方はチビだが、もう片方は身体は大きい。どっちもいかにもチンピラな雰囲気が漂っている。
年は少女も少年もどっちも服装から判別して15か16か…?
あの制服は隣町のネウス魔術学校の9年生が着ている物の筈だ。
だとしたら自分と同い年の奴らじゃないか…。
「!?」
そう考えながら状況を観ていると、
突然少女が図体のでかい方の少年の腕でどさと地面に押し倒された。
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