1人が本棚に入れています
本棚に追加
明けましておめでとうございます……
さて。
私、倉山月子には不幸な事がある。
それは私が正月生まれだという事。
「お正月おめでとう。今年も良い年になるといいわね~はい、これお年玉ね」
今では母は私の誕生日について触れる事すらない。
「誕生日プレゼントは」
過去に一度尋ねた時に黙殺されてから私はこの質問を二度としていない。
私、倉山月子には不幸な事がある。
それは私に弟がいないという事。
子供の頃、少女漫画が好きで親の本棚からも何冊か勝手に読んでいたのだが、その内の最ものお気に入りの一つに、
姉と弟の禁断の恋を描いた漫画があった。
それを読んでから私はずっとまだ見ぬ弟への思いを拗らせ続けているのだが、残念な事に私は今日まで一人っ子だ。
私、倉山月子には不幸な事がある。
それは私がもう正月を迎える事が出来ないという事。
「……誠に申し上げにくいのですが、倉山さんの命はあと持って10ヶ月でしょう」
そう言った医師の眼鏡に映った私の顔はどんなのだっただろうか。
……今ではもう思い出せない。
最初のコメントを投稿しよう!