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南悠太
いきなりだけど自己紹介するな。オレは南悠太。“ゆうた”じゃなくて“はるた”だから気をつけること。16歳の高校2年生。
好きなものは焼き肉、購買で売ってる1日限定20個の焼きそばパン、スポーツ(特にバスケ)、とにかく遊ぶこと。
オレには5つ上の恋人がいる。女じゃなくて男なんだけど。
その人は八雲さんって名前で、かっこいい。とにかくかっこいい。
顔はもちろんイケメン。下がりすぎないゆるいタレ目、やわらかい黒髪、ちょっと不健康そうな白い肌はアレだけど女の人みたいにキレイ。
そして何より、八雲さんはタバコを吸ってる姿がかっこいい。
八雲さんはタバコを吸うとき、必ずオレから距離をとる。
オレが近づいてきたら火を消すし、離れたのを確認してから吸い始める。
大事にされてるって感じるけど、タバコを吸ってる姿がを見たいオレとしては少し物足りない。
どうやってタバコ吸ってる姿を近くで見ようか考えてたとき、クラスメイトの女子たちの会話がたまたま耳に入ってきた。
オレは反省した。
自分のことしか考えてなくて、八雲さんの健康のこととか気にしたことなかった。
それからは八雲さんがタバコを吸ってる姿を見るたび、やっぱりかっこいいなという思いを殺して注意するようになった。
「んっ…。八雲さんには禁煙してほしいけど、キスしたときのタバコの味八雲さんだーって感じるから好き」
「……お前はなんで俺の決意を簡単に揺るがすの」
キスをしたあとそう言ったら、八雲さんがガクっと肩を落とした。
俺の決意が…って小さくぼやく八雲さんがおもしろくてかわいくて、笑いが止まらない。
八雲さんがオレの顔を見て、何か考え込み始めた。
「あー、」
「え、なに?なんか付いてる?」
「それ禁止」
「……どれ?」
なんのことを言ってるのかまったくわからなくて、うんうんと考えてたら八雲さんがふはって笑った。
「ほんとお前かわいいな」
「八雲さんはかっこいいよ?」
「ん、ありがと。俺が禁止って言ったのは、その笑顔な」
「笑顔?」
「その笑顔、俺といるときしか見たことないけど…かわいすぎるから俺以外の前で見せちゃダメ」
そう言って八雲さんはオレの額と、目尻と、唇にキスを落として肩口に顔をうめた。
うわー、もう、八雲さん大好き。
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