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しばらく低く流れるジャズに耳を傾けていた遼太郎が話をまとめようとするかのように言った。
「親たちは知らないはずだ。黙ってやっててくれ。いつか、あいつもまともな道に戻るはずだから」
遼太郎はそれを待っているのだろうか?
鈍い痛みがチクリと胸を刺す。
「お母さんは、二人が付き合ってると思ってる」
「ああ」
遼太郎のグラスがまた空になる。
「それでいいの?」
姉は遼太郎を隠れ蓑にして不倫を続けていることになる。
どうしてそれを許すのだろう?
それは、それだけ遼太郎が姉を愛しているから。
それほどまでしても、姉を手放したくないから。
答えを知っているのに、どうして私は彼の口からそれを聞こうとしてしまうのだろう?
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