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「課長の誕生日は今日じゃなくて十二月だよ」
「知るかよ」
否定だけすればよかったものを、余計な情報までつけたせいか、遼太郎は不機嫌にグラスを空けた。
早くも氷だけになったグラスを横目に見ながら、不安になる。
お酒のアルコール度数のことはよくわからないけれど、このペースで飲んだらまずい気がする。
それにしても、なぜ彼は仕事を切り上げてお店に来てくれたのだろう?
あの時の急いで来たらしい彼の乱れた髪を思い出すと、胸の底が騒めいた。
でも、そこに特別な意味はないことも、自分が期待していい立場でないこともよくわかっている。
もし西岡課長が既婚者だと知っているなら、不倫に走った姉を私に重ねたのだろうか。
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