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「気にいったか?」
「すごく美味しい」
「よかったな」
素直にうなずくと、こんな時なのに遼太郎は一瞬だけ優しい目をして微笑んだ。
それは昔、彼が私を助けてくれた時に見せてくれた笑顔だった。
彼の大きな傘の下にいるような温もりが切なくなる。
どうして、いつから私たちはこんなにねじれてしまったのだろう。
あの頃に帰りたい。
無邪気に彼を見つめていた、あの頃に……。
隣の遼太郎も昔のことを思い出していたらしい。
でも、それは私ほどセンチメンタルなものではなかった。
「あのランドセル背負ったガキに、酒を勧める日が来るとはな」
「そっちだって小学校ではランドセル背負ってたでしょ」
今はもう二十五歳なのに、と膨れると、遼太郎はまた優しい目で笑った。
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