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「二十五、か」
遼太郎は私の年をつぶやいてから、思いがけないことを言った。
「誕生日は一月だったな」
「……うん」
驚きすぎて、すぐに返事ができなかった。
私の誕生月なんて、そんな些細なことまで覚えているなんて。
「俺の記憶力をなめるな」
私が露骨に驚いたせいで、考えを読まれたらしい。
オレンジ色のグラスに口をつけながら遼太郎を見上げると、目が合った。
「埼玉を離れてから、誕生日は? 祝ってもらったか?」
「ううん。……うん」
「どっちだ」
寒くて人恋しい季節だけに、時には寂しい誕生日もあった。
でも、今こうして遼太郎が尋ねてくれただけで、それは懐かしい思い出になった気がする。
「来年の誕生日はどうしてるのかな……」
私がそう言うと、遼太郎は黙っていた。
きっと私はいつも通り仕事をして、友達と鍋をつついて、普通に過ごすのだろう。
その時にはもう関西に戻っているはずだ。
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