二度目の衝撃

3/38
前へ
/38ページ
次へ
「早く地鎮祭を見たいわね」 構想決定し設計や構造計算を重ね、工法の選択やその後の準備段階を経てようやく工事が始まるけれど、それは竣工までの長い道のりへのスタートだ。 「そこからが大変なんだけど、でも早くゴールに向かって走りだしたいわよね」 「結局、A地区はどうなるんでしょう?」 「A地区は当初の案のまま決まるでしょうね。倉上の技術系出身の上層部が強く推してるの。新技術の施工例として今回のプロジェクトは一番アピール性があるのよ。地域貢献のクリーンなイメージもあるから、世間受けがいいわけ」 「そうですか……」 新技術の粋を体現したような機能美は確かに美しい。 現実にあのビルが都内の真ん中にあれば、私は見とれてしまうだろう。 でも、あの高層ビルに保育園が入るのかと思うと複雑だ。 いくら低層階にあっても、幼児期に一日の大半を過ごす場所としてふさわしいのか疑問が残る。 それに、将来その子たちが成長した時、幼い頃の原風景が緑にあふれた自然ではなく、高層ビルというのはどうなのだろう。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1103人が本棚に入れています
本棚に追加