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しばらく黙って空を見上げていた市川さんが、神妙な口調で言った。
「でも、あなたたちと仕事ができて良かったと思ってるわよ」
「そ、そんな綺麗にまとめて勝手に追い出さないでくださいよ! まだ任期は残ってるんですから」
「あら」
「あら、じゃないですよ、まったく」
憤慨するふりをしたけれど、高慢ちきな市川女史にそんなことを言ってもらえたのがとても嬉しかった。
「いつ頃、関西に帰るの?」
「予定では九月ですけど、はっきり決まっていません」
「西岡課長も一緒に?」
「さあ……。課長の予定は聞いてないです。私より長いと思います」
そう、と答えてから市川さんはいつものごとく話題を大きく飛ばした。
「あなたの課長、どうして指輪を外してるの?」
遼太郎も知っていたし、西岡課長が結婚していることは結構知れ渡っているらしい。
この調子では離婚で揉めていることも、じきに周知のこととなってしまうのだろう。
でも、それを私の口で明かすわけにはいかない。
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