二度目の衝撃

9/38
前へ
/38ページ
次へ
「一泊二日じゃ弾丸ツアーだよな」 「まあね」 課長たちの会話を聞きながら、公園で聞いた話を思い返す。 〝僕は奥さんの決断を受け入れる〟 ああ、もういよいよなのかもしれない……。 「及川ちゃんも関西へ? 慌ただしいね」 「あ、いえ、私は関西に帰りませんよ。実家はこっちなんです」 「え、そうなの? そっかぁ、たしかに関西弁じゃないよな」 答えてからふと隣を見ると、遼太郎と目が合った。 遼太郎は誰にも気づかれないぐらい、ほんのわずかに目だけで微笑むと、また視線をパソコンに落とした。 これって、まるで社内恋愛みたい……。 ほんの一瞬の視線のやりとりに、私は薄情にも課長の心配を忘れて舞い上がった。 最近の遼太郎は、ほんの少しだけこんな仕草を見せる。 好きだという言葉こそお互い口にしなかったものの、七月の末に多摩川のほとりを歩いた夜以来、私たち二人の時間は確実に甘くなっていた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1103人が本棚に入れています
本棚に追加