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「一泊二日じゃ弾丸ツアーだよな」
「まあね」
課長たちの会話を聞きながら、公園で聞いた話を思い返す。
〝僕は奥さんの決断を受け入れる〟
ああ、もういよいよなのかもしれない……。
「及川ちゃんも関西へ? 慌ただしいね」
「あ、いえ、私は関西に帰りませんよ。実家はこっちなんです」
「え、そうなの? そっかぁ、たしかに関西弁じゃないよな」
答えてからふと隣を見ると、遼太郎と目が合った。
遼太郎は誰にも気づかれないぐらい、ほんのわずかに目だけで微笑むと、また視線をパソコンに落とした。
これって、まるで社内恋愛みたい……。
ほんの一瞬の視線のやりとりに、私は薄情にも課長の心配を忘れて舞い上がった。
最近の遼太郎は、ほんの少しだけこんな仕草を見せる。
好きだという言葉こそお互い口にしなかったものの、七月の末に多摩川のほとりを歩いた夜以来、私たち二人の時間は確実に甘くなっていた。
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